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ART OSAKA
からほりまつアート
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前衛性×娯楽性×野外劇→維新派
銅版画×パステル 安井寿磨子
芸術家×職人→マツモトヨーコ
駄洒落×アート→現代美術二等兵
刻×フレキシビリティ→名和晃平
インスタレーション×映像 → 松井智惠
#5「万博×未来の廃墟→ヤノベケンジ」
#4「ドライブ×ノイズ→ログズギャラリー」
#3「セルフポートレイト×美術史→森村泰昌」
#2「聞く(=音)×見る(=アート)→藤本由紀夫」
#1「淀川×ゴミ×アート→ 淀川テクニック」
 
 
 
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作品を買うアートフェア

 作品は鑑賞するだけではなく、所有することだってできる。気軽に足を運び、自分の気に入った作品を買うことが出来る「アートフェア」が、近年大阪でも開催され、注目を集めるようになってきている。

ARTOSAKA2008会場風景/アートコートギャラリー

ARTOSAKA2008会場風景/アートコートギャラリー

 アートフェアとは、「芸術の見本市」である。多くのギャラリーが巨大な見本市会場に集まり、ブースを持って所属アーティストの作品を設置し、販売する。バーゼル、ロンドン、ニューヨークなどの大都市で定期的に行なわれ、世界中からディーラー、コレクターや愛好家が集まり、アートの動向がわかる重要な場となっている。
日本でもアートフェアはここ数年盛り上がりを見せており、東京と大阪で大きなアートフェアが開催されている。

 大阪では、それまでにアートフェアが無かったわけではない。1980年代から関西のギャラリーを中心に、公の文化施設で定期的に行なわれてきた。その後、関西外のギャラリーも誘致し市内のギャラリーで行っていたが、2007年より会場を北新地の堂島ホテルに移しリニューアルした形でART OSAKAへと発展していった。
 展示場所は、通常の白い壁で覆われた展示空間ではなく、大阪のクリエイティブユニットgrafの家具で統一されたスタイリッシュな客室だ。
客室という疑似住空間を上手く利用して、作品がインテリアの一部に見えるような配置、絵画5−6点だけをすっきりと並べたり、反対にベッドの上からバスルームまで所狭しと並べるなど、展示の仕方にはギャラリーのカラーやセンスが発揮される。価格は、1−3万円台の若手アーティストの小品から、数十万円のものまで予算に合った作品選びが可能だ。地の利や話題性もあって、昨年は2日間で観客動員数4,500人を記録した。

<中央>小山田徹によるインスタレーション<左>展示風景。左の窓からはお墓が見える<右>remoによる映像上映

ARTOSAKA2008会場風景
<左>ギャラリーノマル  <右>ギャラリー風

 ART OSAKA イベント企画プロデューサーの加藤義夫さんに話を伺った。

Q 成功の要因はどこにあったとお考えですか?

加藤:色々ありますが、まず参加ギャラリーを増やしました。東京のアートフェアに出向いて参加を呼びかけたり、海外の画廊も誘致し、取り扱う作品のジャンルに偏りをなくし、バラエティに富んだものになることを心がけました。それから、オークション、シンポジウム、トークなど、単に作品の売買の場を作るだけではなく、アートを取り巻く環境を伝える部分にも気を配りました。また、関西圏外の方にも足を運んでもらえるように、天神祭の期間中に行ない、「アートフェア+観光」という日程を組んだ事も功を奏したようです。今年は「水都大阪2009」のオープニングに合わせています。昨年は売り上げ、動員数共に過去最高となりました。

Q どのような作品が売れたのでしょう?

加藤:大部分は、20万円以下のその場で買える価格帯の作品です。ディーラーやコレクターの方、投機目的で買う方もいます。そういった方々に加え、今までに美術品を買った事が無くて、「絵って2-3万円で買えるの?」と知って、初めて買ったという方も増えました。インテリアとして部屋に作品を飾りたいと思っていても、どこに行って買えばいいかわからない、ギャラリーは敷居が高いと感じていた人が多かったのでしょう。アートフェアに行けば選択肢が沢山あって、緊張感も無く、服や雑貨を買うような気分で買えるという安心感があると思います。そのなかで、後日展覧会に足を運ぶようになる人も増えると思うんですよね。

Q 現代アート特集を組む雑誌などもあり、アートはおしゃれという考え方もありますが。

加藤:カルティエ、エルメス、ルイ・ヴィトンなどファッションブランドも現代美術のギャラリーや展覧会などを積極的に行ったりアーティストとのコラボレーション商品を販売したりと、雑誌などでアートを知るようになったのだと思いますし、良い機会だとは思います。

Q 今後の課題や方向性は?

加藤:このまま規模を拡大しても、普通のアートフェアになっていくだけだと思っています。そうではなく、我々はアジアを視野に入れながら、上質なギャラリーを集めて質のいいアートフェアを続けたいと考えています。20年以上試行錯誤してきましたが、若い作家を取り扱うにしても、「使い捨て」にするのではなく、継続して展覧会を行ない育てていく、という姿勢が大切ですね。ブームに翻弄されずに、質の良いお客さんを育てていくのも課題です。

 一日で多くのギャラリーを見てまわるのには限界がある。しかし、アートフェアのように一カ所に集中して作品を観ることができる仕組みは、それぞれのギャラリーの個性がわかると同時に、自分も楽しみながら作品を買ってアーティストを応援する、という直接的な関係も築く事が出来る。
 利便性、透明性など潜在的な美術愛好家にとっても好機会となって、少しずつアートの新たな楽しみ方が広がっていくに違いない。

<中央>小山田徹によるインスタレーション<左>展示風景。左の窓からはお墓が見える<右>remoによる映像上映

ARTOSAKA2008会場風景 <左>おかけんた氏によるオークション
<右>北川フラム氏による「水都大阪2009 」レクチャー

筆者プロフィール
木坂 葵
1978年生まれ。神戸大学文学部卒業。在学中より大阪のアートNPOにてコーディネーターとして勤務。その他、関西を中心に美術の裏方業務経験を積む。現在、水都大阪2009 アート部門キュレーター。